乳がんは日本人女性に最も多くみられるがんであり、2019年には9万4,000人の女性が発症し、9人に1人が生涯に乳がんを経験するリスクがあります。医療の進歩にもかかわらず、2020年には1万5,000人の女性が乳がんで亡くなり、死亡率では4番目に高いがんとなっています。
25年間のマンモグラフィ検診の実施にもかかわらず、乳がんの死亡率は依然として上昇しており、特に50代の女性において顕著です。罹患率は欧米諸国とは異なり、日本では45歳から49歳の年齢層で一つのピークがみられます。この年齢層の女性は社会と家庭の中心的な存在であることから、特化した乳がん対策が国家的戦略として必要です。

欧米諸国、特に米国では、乳がん罹患率が上昇している中でも、マンモグラフィ検診による死亡率減少効果のエビデンスが観察されています。注目すべきは、乳がん罹患率が上昇から平衡に達する10年以上前に、すでにマンモグラフィ検診による死亡率減少効果がリアルワールドで確認されている点です。つまり、マンモグラフィ検診プログラムが有効であれば、乳がん罹患率が急上昇している時期にも死亡率減少効果が現れるはずです。過去のマンモグラフィ検診のエビデンスを確立した欧米諸国のデータは、乳がん検診プログラムが効果的であれば、乳がん罹患率の上昇期でも死亡率減少効果が観察されることを示しています。

(よぼう医学 2025 春号 №28)
(吉村 やすのり)