生まれたばかりの赤ちゃんの眼は、構造そのものはだいたい完成していて、光などの視覚刺激を受け取る力は十分に備わっています。しかし新生児の視力は0.02程度で十分に見えていません。これは視力には眼で視覚刺激を受け取ることだけではなく、取り込んだ画像を脳が認識することが必要で、生まれた時は脳の認識機能が未熟なためです。月齢が上がるにつれ視力は上昇し、3歳頃で0.8~1.0程度の視力になります。
見ることは、まず景色などの視覚刺激が眼に入り、その刺激は網膜の中心にある黄斑に移行します。それが視神経を通って脳に伝わり、脳がその画像を認識することで初めて見えるという状態が生じます。この視覚刺激の経路は生まれた時からつながっているのではなく、何度も繰り返して物を見ているうちに、徐々にその経路がつながってきて、その結果視力が出るようになるのです。
見る機能を育むためには、脳に視覚刺激に対する感受性がある時期に刺激を受けることが重要です。しかし脳に視覚刺激の感受性がある時期は意外に短く、概ね生後3カ月から1歳半くらいまでがピークと言われています。そこから3歳を過ぎると感受性はゆるやかに落ちていき、6歳から8歳くらいで消失すると言われています。つまり何らかの理由で脳に視覚刺激が届いていない乳幼児には、感受性があるうちに治療しなければ、視力を伸ばすことができません。視覚に関する疾患などに関しては早期に発見し、早期に治療・対処することが重要です。
(母子保健 2024年12月号)
(吉村 やすのり)