遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは、親から子に遺伝する遺伝性腫瘍の一つで、DNAを修復する機能のある遺伝子BRCA1やBRCA2に変異があり、がんを抑制する働きが弱くなっています。2分の1の確率で子に遺伝し、約400人に1人の割合で存在します。HBOCの女性が生涯で乳がんになるリスクは約40~90%と、日本人女性全体の9%に比べて高くなっています。また卵巣がんになるリスクは約20~60%で、1%の一般の最大60倍に高まります。男性でも乳がんや前立腺がんのリスクが高くなります。しかし、全員ががんになるわけではありません。
2020年4月から、乳がんか卵巣がんになった人のHBOCの遺伝子検査やカウンセリング、乳房や卵管・卵巣の予防切除に公的医療保険が使えるようになります。切除を選ばない場合は、がんになっていないかを調べる検査にも適用されます。HBOC以外の遺伝性腫瘍には、大腸がんなどになりやすいリンチ症候群、子ども時代から様々ながんができやすいリ・フラウメニ症候群、目のがんになりやすい網膜芽細胞腫などがあります。原因となる遺伝子の種類により、発症率は異なります。血液を使い、リンパ球と呼ばれる細胞の遺伝子配列の違いをみて、特定の遺伝子に変異があるかを調べることができます。検査を受けた本人に加え、家族にも影響するため、カウンセリングを受けるなどして、結果の意味を十分理解することが大切となります。
(2020年2月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)