乳房・卵巣の予防切除

乳がんや卵巣がんのリスクを減らすために、乳房や卵管・卵巣の予防切除が実施されるようになっています。予防切除は、BRCA1、2という遺伝子に変異がある遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の対策として主に検討されています。HBOCの女性は、80歳までに7割が乳がんに、2~4割が卵巣がんになるとの報告があります。乳がん患者の約5%、卵巣がん患者の約15%に該当し、年間数千人HBOC女性が、乳がんや卵巣がんを発症しているとされています。
米国の指針によると、HBOC女性のがん対策として、乳がんは、25歳以降年1回、磁気共鳴画像(MRI)などの検診を続けるか、乳房の予防切除を検討します。卵巣がんは、早期発見が難しいため、出産を終えた35~40歳で卵管・卵巣の予防切除を推奨しています。
読売新聞の調査によれば、予防切除580件の内訳は、卵管・卵巣358件、両乳房25件、乳がん発症者の反対側乳房197件でした。医療機関別では、聖路加国際病院143件、がん研有明病院86件、ナグモクリニック61件、昭和大病院48件などです。都内にある上位4医療機関で計338件と全体の6割を占めています。
日本乳癌学会は、HBOC女性の予防切除を条件付きで推奨しています。卵管・卵巣については、妊娠・出産を望まない場合、乳房は本人の意思に基づく場合などです。予防切除で発症のリスクは9割以上減少します。公的医療保険が適用されるため、自費治療では、HBOC検査に10万~20万円程度、卵管・卵巣切除は数十万円かかります。乳房切除は片側のみで再建も含め100万円程度の負担になるケースもあります。費用面から手術をためらう女性もいます。

(2019年12月3日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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