現在の日本の様々な制度は、男女が婚姻し、嫡出子をもうけることが前提になっています。そして、その前提から外れた人への抑圧がみられます。厚生労働省によれば、日本の母子家庭は推計123万2千世帯です。未婚の母の割合は8.7%と、3.6%だった1988年からの30年間で倍増しています。しかし、その母親が働いて得る年収は平均177万円です。伝統的な家族から外れると視線も制度も大変冷たいものがあります。結婚して出産するのが、女性の仕事という考えは法制度にも投影されています。ひとり親らの税負担を軽くする寡婦控除の対象を未婚のひとり親へと広げることも大切となります。
今の法制度では、夫婦どちらかの姓にそろえる法律婚をしないと、両親そろって親権を持つことはできません。家族手当の対象外とする会社もあります。法律で夫婦の姓を同姓にするように義務付けている国は、わが国のほかにありません。少なくとも選択制でも良いのではないでしょうか。選択制であっても夫婦が不利益を被らないような法的な手続きが必要となります。
少子化対策に成功した例としてフランスとスウェーデンがあります。これらの国では、育児休業中の手厚い所得保障や育児の手当、保育サービスの利用料への補助などの支援があります。法律婚か事実婚か、未婚のひとり親かといったことは一切問うていません。それにより、合計特殊出生率は、それぞれ1990年代の1.5~1.6台から一時は2.0前後までに回復しました。一人ひとりの生き方の選択肢を尊重したうえで、子どもを産んだ人や産もうという人を分け隔て無く支えることが、安心して子どもを産める社会につながり、少子化対策にもなると思われます。
(吉村 やすのり)