労働時間の減少
日本では深刻な人手不足が続いています。企業倒産も増えています。求人難や人件費高騰による人手不足倒産は前年度比で6割増と、過去最多となっています。人手不足解消には、人員が過剰な分野から不足する分野へと労働移動を円滑化する必要があります。
1990年の水準を100とした場合、2024年の就業者数は109と約1割増えています。対して労働時間をかけ合わせたマンアワーは86と14%低下しています。短時間勤務のパート比率の上昇やその労働時間の減少により、正社員も含めた総労働時間が短くなっているためです。
労働時間の減少は、経済成長を下押しする要因となります。経済成長は労働、資本、生産性という3要素で決まり、これらを最大限活用した時に実現される成長率が潜在成長率です。労働はさらに労働時間と就業者数に分けられますが、このうち労働時間の寄与は1980年代半ば以降、一貫してマイナスが続いています。ここ数年は就業者数の増加を上回り、労働全体の寄与はマイナスとなっています。

(2025年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)