人口10万人あたりの重症患者向け病床数

医療施設と人材のミスマッチが、新型コロナウイルス重症者の受け入れ余力の低下を招いています。欧米と比べて病床数が極端に少ないわけではなく、重症者の人数そのものは欧米より少ないのに綱渡りの状況が生まれています。日本全体の10万人あたりの重症者病床(ICU以外も含む)は13.5床であり、ドイツの33.9床、米国の25.8床より大幅に少ないものの、フランスの16.3床に見劣りせず、英国やイタリアより多い状況です。
決定的な違いが、集中治療専門医1人あたりの重症者病床数です。日本は集中治療専門医が約2,000人で、病床数は1万7,000床もあります。1人あたりの病床数は8.7床であり、独米はそれぞれ3.4床、2.9床です。病床数が少ない英国でも5床を下回っています。
専門医が足りない状況で、施設だけ増やしても受け入れ余力は高まりません。従来も収益増を狙い、人材を確保する前から必要以上に重症者病床を置く病院がありました。人材育成には時間がかかるため、病床と人材を病院間で補い合うことが大切になります。その中心となりうるのは公的病院や大学病院であり、個別自治体の対応だけでは限界があります。

(2021年1月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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