人工血液の実用化

 血液の機能の一部を代替する人工血液の実用化が近づいています。奈良県立医科大学や防衛医科大学校は、2025年にも臨床試験を始め、2030年ごろの実用化を目指しています。長期保存でき、血液型に関係なく輸血できるようになり、献血者数の減少に対応し、災害時の備えに役立ちます。

 ヒトの血液は、液体の血漿と固体の赤血球や血小板、白血球などからなります。赤血球は酸素を運び、血小板は出血した場所に集まって血液を固めて出血を止めます。免疫を担う白血球は病原菌などと戦います。輸血時に特に必要とされるのは赤血球と血漿です。出血時には血漿と血小板で傷口を急いでふさぎ、赤血球を補って酸素不足を防ぐ必要があります。

 輸血用の血液製剤は、保存可能な期間は血漿以外の成分は1カ月以内に限られます。また、多くの場合は同じ血液型の人にしか輸血できません。供給は常に綱渡りで、大きな災害が起きれば、怪我人が多数発生して血液製剤の需給は逼迫してしまいます。少子高齢化などによって献血者数は減少しています。

 防衛医大などの研究グループは、血小板の止血能力を高める素材である人工血小板を開発しています。開発した人工血小板は、血小板を活性化させる物質を油の膜で包んだもので、室温で1年以上保存できます。血小板と並び需要がある赤血球を人工的に作ったのは奈良県立医科大学です。京都大学iPS細胞研究所は、iPS細胞から血小板を大量に作り出そうとしています。

(2024年12月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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