人材の流動性

 総務省によれば2023年の転職希望者は初めて1,000万人を超えました。就職情報会社のマイナビの調査によれば、2023年の正社員の転職率は7.5%と2016年に比べると2倍に伸びています。人手不足やジョブ型雇用の広がりを背景に、働き手は転職に踏み切りやすくなっています。

 転職時に年収や職位が上がる事例は増えています。前職に比べて賃金が1割以上増加した人は36.1%と過去最高を更新しています。2023年の転職後の平均年収は、489万6,000円と転職前より17万1,000円増えています。2019年時点では4万円減っていましたが、2020年以降はプラスとなっています。

 人材の流動化が進みつつある日本ですが、世界的には遅れています。労働政策研究・研修機構によれば、勤続年数が1年未満の雇用者の割合は、米国や韓国など主要国は軒並み2~3割前後であるのに対し、日本は7.6%と低さが際立っています。流動性の低さは年収差に出ます。マーサーの調査によれば、大企業の外資系の年収は、日系企業をスタッフ職で2割、部長職で4割弱上回っています。

 外資系企業では、成果が著しく低かったり、組織内での行動に問題があったりすると、PIPと呼ばれる業務改善計画を会社と社員が話し合って作ります。改善計画に基づいて行動し、結果が出なかった場合、降格や退職勧奨にもつながります。解雇規制が強いとされる日本の場合、PIPの実施を公言するところは稀です。中途採用増で将来はPIP導入が広がってくると思われます。

(2024年10月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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