人材を資産と見なし、投資をしてリターンを生み出すという人的資本の理論は、1960年代に発達し、ノーベル経済学者のゲーリー・ベッカー氏ら多くの研究は、投資が労働生産性にもプラスに働くとしています。しかし、日本は投資に及び腰でした。経済産業研究所によれば、日本の投資額は2010年代にGDP比0.34%と欧米の3分の1です。その間に生産性は米国との差が8ポイント開き、6割の水準になっています。
人への投資が設備投資を上回る企業も出てきています。しかし、装置を導入しても使いこなす人材がいなければ意味がありません。人への投資が設備投資を補完することになります。しかし、投資を増やすだけで、人的資本が力を発揮するわけではありません。個人が能力を発揮できる体制が必要になります。ジョブ型の人事制度の導入も大切で、管理から支援へのシフトの意識改革が求められます。
(2023年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)