主要企業では、人的資本情報を開示する動きも広がっています。人材コンサルのリンクアンドモチベーションによれば、日経平均株価を構成する225銘柄のうち、2023年に統合報告書を公表した208社で、従業員エンゲージメントを開示した割合は、全体の47%と前年の2倍に高まっています。
知識やスキルを成長の源泉と見なす人的資本経営への関心が高まり、欧米では開示ルールの整備が進んでいます。日本でも、2023年から大手企業には有価証券報告書で、女性管理職比率や人材育成方針を開示することが義務づけられました。ただエンゲージメントや研修費用などの開示は、計測が難しいこともあって各社の裁量に委ねられています。機関投資家は、人材投資の多寡や労働環境で、企業を見極めようとする動きを強めています。人的資本に消極的な企業では、人材流出や投資撤退のリスクも高まります。人手不足も深刻化する中、情報開示の精度や独自性を競う動きは今後強まります。
(2024年3月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)