2025年に人口の多い団塊世代はすべて75歳以上の後期高齢者となりました。65歳以上の高齢者は約3,600万人と全人口の3割を占め、要介護・要支援認定率は約20%まで上昇しています。現役世代の介護負担は高まっています。
経済産業省は、2024年に家族などの介護に従事する就業者をビジネスケアラーと定義し、企業に支援を促す指針を出しました。ビジネスケアラーは2015年の232万人から2030年に318万人に急増し、2025年の介護離職者は11万人にのぼります。東京商工リサーチの調査によれば、企業の65%が介護離職の増加を見込んでいます。
介護負担は働き手の生産性を28%押し下げ、企業の損失は2030年に9兆1,792億円に達するとされています。ビジネスケアラーの6割は、会社の中核を担う40~50代です。育児に比べて期間を見通しにくい介護は、当事者が周囲に負担を隠そうとする傾向があり、問題が顕在化しにくくなっています。社員の仕事と介護の両立状況を把握している企業は44%です。
日立製作所の実施した調査によれば、仕事と介護を両立できないと思う社員の不安要因は、両立の仕組みが分からないが41%など多くなっています。介護を労使交渉のテーマに位置付けています。介護休暇制度などの整備に加え、情報提供などのソフト支援も欠かせません。

(2025年6月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)