介護人材は全国で足りていませんが、不足の度合いには地域差があります。人手不足の介護施設の割合は、岐阜県の8割をはじめ半数近い都道府県で7割を超しています。一方で55%と最も低い福井県は、外国人実習生の受け入れに自ら関わり、週休3日制の導入を施設に促すなど、介護の担い手が働きやすい環境づくりを進めています。
介護労働実態調査によれば、全国の介護施設で職員が、大いに不足、不足、やや不足と答えた割合は、2022年度で69%でした。10年で18ポイント増えています。要介護認定者は、全国で約700万人と増え続けていますが、介護職員は約210万人で必要な人数を満たしていません。
介護現場は賃金だけでなく休みが少なく、休みが取りにくいと人手が減る負のスパイラルになります。労働環境の整備が人材獲得には必須です。厚生労働省は、2024年度から事業者に支払う介護報酬を全体で1.59%引き上げます。このうち6割の0.98%は、職員の処遇改善に充てますが、他産業との給与差は大きいままです。団塊世代が85歳に達する2035年には、介護人材が約70万人足りなくなるとされています。不足が続けば介護保険制度が持続してもサービスが受けられない恐れが生じます。
(2024年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)