他人のiPS細胞移植

 理化学研究所などのチームは、失明の恐れがある網膜の病気の患者に、他人のiPS細胞を網膜の細胞に変えて移植する手術を実施しました。京都大学iPS細胞研究所が備蓄するiPS細胞ストックの細胞を、網膜の細胞に変化させ、目の難病加齢黄斑変性である60代の男性の目に移植しました。ストックの提供者は、多くの日本人に拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人で、手術の対象はこの免疫の型に合う人を選びました。
 他人のiPS細胞を使えば、患者本人のものに比べて準備費用や時間を大幅に減らせ、多くの人が受けられるようになります。拒絶反応がないかや、移植細胞ががん化しないかなど、今後は安全性の確認が大切となります。しかし、今回もまだ研究段階であり、過度な期待は禁物です。確立された研究だと勘違いされやすいとの意見もあります。医療として認められるだけの根拠を蓄積してゆくことが大切です。これまで自らのiPS細胞の移植を含めて、臨床的意義が明らかに示された研究は認められていません。

(2017年3月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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