他人のiPS細胞移植治療

 他人のiPS細胞から作った組織を患者に移植するという臨床研究に、理化学研究所や京都大などが本格的に乗り出します。他人の細胞を使った「他家移植」に拒絶反応のリスクがありますが、自分の細胞を使う「自家移植」に比べて治療にかかる時間や費用を減らせると期待されています。すでに作られたiPS細胞を使えれば、4カ月ほど樹立するまでの期間を短くすることができます。また一般的に医療目的でiPS細胞を作るには、5千万以上かかりますが、iPS細胞は無限に増やせるため、他人のものが使えれば、患者個別に作る必要がなくなり、コストを削減することができます。
 しかし、他人の細胞を移植すれば、免疫による拒絶反応が起こる可能性があります。それに対しては、細胞表面にある「HLA」というたんぱく質の型が合えば、ある程度抑えられることがわかっています。計画ではHLAの型が異なる数十種類のiPS細胞を集め、冷凍保存しておき、これらの人の細胞の中から患者に近い型を選んで移植すれば、拒絶反応のリスクを下げられる可能性があります。

(2015年4月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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