戦後大学など日本の研究機構は、職員を定年まで雇う終身雇用制度を取り入れてきました。しかし最近、大学や公的研究機関で、年数を限って雇用する任期付き研究者の数が増えてきています。人材の流動性を高めて組織を活用化する利点がある半面、若手の安定的な雇用を脅かしている弊害も指摘されています。国は研究開発の人材を輩出しようと大学院を拡充し、博士号を持つ研究者を増やしましたが、一方で財政事情の悪化から研究機関の人件費は削減され、定年制ポストは減り続けています。その結果、任期付き研究者が増えてきました。
米国の主要研究大学を対象にした調査でも、任期付き教員の増加傾向が見られています。ただし、米国は任期無しの教員も増えています。短期間に集中して好きな研究に没頭できる長所がある一方で、新薬開発のような長期の研究や継続したデ-タが必要な観測研究には適さないといわれています。高度な科学技術を習得し、課題解決に向け分野の壁を越えて強調できる人材は、世界のさまざまな組織で活躍が期待されています。任期付き研究者として経験を積み、定年制のポストを獲得できれば理想です。欧米では研究機関だけでなく、企業でも博士人材を優先して雇う環境が整っています。
(2015年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)