発達障害などの人々が持つ高い集中力や知識を、AIやサイバーセキュリティーといったテック業務で生かすニューロダイバーシティの取り組みが広がっています。不得手なコミュ力や情緒は周囲が支えることにより、チームとして大きな成果を挙げることがあります。
国内企業の採用意欲は低調です。経済産業省が2022年3月に公表した委託調査によれば、障害者全体の就職率の46.2%に比べ、発達障害者は33.1%にとどまっています。ニューロダイバーシティは、専門人材不足に苦しむ米国シリコンバレーのテック企業が発祥です。明確な医学的根拠は不明ですが、発達障害者は、テック以外でも品質管理や統計処理など、知識や集中力が必要な業務が向くとされています。
国内でも武田薬品工業や花王などのコンソーシアムといった業種を超えた連携はあります。海外のように高度な職域での雇用プログラムを提供する企業は少数です。文部科学省の2022年12月公表の調査によれば、通常学級の小中学生の8.8%が発達障害の可能性があります。古い偏見にとらわれる組織は、新時代の金の卵を逃すことになるかもしれません。
(2024年1月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)