東京商工リサーチの発表によれば、2021年度の倒産件数は5,980件で、1964年度の4,931件に次ぐ57年ぶりの低水準でした。新型コロナウイルス禍に対応した資金繰り支援策で、返済能力が低い会社の倒産まで抑え込んでいます。上場企業の倒産は2年ぶりに発生しておらず、倒産した企業の負債総額は1兆1,679億円と3%減り、1973年度に次ぐ48年ぶりの低水準でした。
倒産は、新型コロナの打撃が大きかった業種も含め全般的に減っています。飲食業の倒産件数は22%減の612件、宿泊業は44%減の71件でした。倒産が減ったのは政府主導の資金繰り支援によるところが大きく、金融機関も返済猶予に積極的に応じて、倒産を食い止めてきました。
今後の懸念材料の一つは、借入金の返済です。実質無利子・無担保のゼロ融資の元本据え置き期間は、1~2年が多いとされ、今春ごろから返済が本格化しているもようです。業績改善が遅れている企業も多く、元本返済が資金繰りを圧迫しかねない状況にあります。急速に進んだ円安、それに伴うエネルギーや原材料の価格高騰も、経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。
ゼロゼロ融資は中小の減らす利点がある一方、金融による規律が働かなくなり事業者側の経営に緩みが生じるとの懸念があります。経済的混乱を避けながら、スムーズに負債圧縮や事業再生に取り組めるかが今後の焦点となります。
(2022年4月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)