厚生労働省が2020~2023年の熱中症の死亡例を分析したところ、103件のうち100件が、初期症状の放置・対応の遅れが死亡の原因でした。さらに詳しい要因では、発見時点で重篤化していたのが78件、医療機関に搬送しないといった対応の不備が41件ありました。2024年に職場での熱中症による死者は30人台で推移しています。熱中症で4日以上の休業を余儀なくされた人を含めると1,195人で、近年は増加傾向にあります。2020年からの5年間では4,648人に上っています。
全企業を対象に6月から熱中症対策が義務付けられるのを前に、各社が対応を急いでいます。従業員の異変を早期に把握し重症化を防ぐのが対策の柱で、怠れば責任者に罰則が科されることになります。暑さは既に厳しさを増しつつあり、予防策の徹底が求められています。
新たな対策は初期対応に重点を置いています。熱中症にはふらつきや大量の発汗、こむら返りといった兆候があります。改正省令はこうした症状に自身や同僚らが気付いた場合に、報告する担当者を事前に決めるよう企業に義務付けています。症状の悪化を防ぐため、作業からの離脱や身体の冷却、医師の診察といった一連の対応手順を整備することも義務としています。対応策を怠った場合、企業側には6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科されます。
(2025年5月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)