企業年金とは、企業が従業員の老後を支える福利厚生として設ける任意の年金制度です。日本の年金は3階建てで、1階部分は20~60歳の全員が入る国民年金(基礎年金)、2階部分は企業に勤める従業員が加入する厚生年金です。企業年金は3階部分にあたり、厚生年金に上乗せされる私的年金の一つとなります。
確定給付と企業型確定拠出に大別されます。いずれも原則、企業が掛け金を拠出し、運用で増やして退職後に支給します。確定給付は将来の支給額をあらかじめ確定し、運用は企業側が担います。確定拠出は拠出額をあらかじめ決めておく仕組みで、運用先は従業員が決めることになり、運用によるリスクは個人が負います。
今後、公的年金の給付水準は少子高齢化で低下します。このため、厚生労働省は企業で働く人が加入できる企業型確定拠出年金について、今は60歳までとなっている掛け金の拠出期間を70歳まで延ばす方針です。掛け金を長く積み立てられれば運用資産が増え、退職後にもらう年金も増えやすくなります。公的年金に上積みとなる企業年金を充実し、老後への備えを後押しします。
加入期間を延ばすのは、2001年の制度創設時に比べると働く60歳代のシニアが増えているためです。労働力調査によると、2018年の60~64歳のうち就業者の比率は68.8%と、2001年に比べて18.1ポイント上がっています。65~69歳は46.6%と11.3ポイント上がっています。政府は企業に70歳まで就業機会を提供するよう求める法改正を目指しており、企業年金でも対応を求める声が多くなっています。
(2019年10月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)