低迷するわが国の科学技術研究-Ⅲ

博士課程学生への支援
博士課程は、修士号を取得する前期(2年間)と、博士号取得を目指す後期(3年間)に分かれるのが一般的です。日本では特に後期の人気が振るっていません。文部科学省によれば、博士号取得者数は、2006年度の1万7,860人をピークに下落し、近年は年1万5,000人程度で横ばいが続いています。



博士学生の減少は、国全体の研究力低下につながります。科学技術・学術政策研究所によれば、日本は研究者の間で引用される回数が上位1%のトップ論文の国別シェアが、2017~2019年平均でわずか2%に低迷しています。国別の順位も20年前の4位から9位に下がっています。
近年、大学院の博士課程に在籍する学生の生活を支える取り組みが広がっています。大学職員として働きながら研究を続けられる制度の導入や、返済不要の奨学金の支給対象の拡大が目立つようになってきています。博士学生を巡る環境は厳しく、博士課程前期(修士課程)を終えた学生の16%が奨学金などの借入金を300万円以上抱えています。文部科学省は、博士課程後期の学生に、年200万円以上を支給する制度を2021年に始めました。大学独自の返済不要な奨学金を支給したり、生活費を支給する大学もみられます。
博士課程が敬遠されるのは、就職難が大きいとされています。大学教員や専門機関の研究員は常勤職が限られ、博士号を得ても非常勤講師などに就かざるを得ない人が多くなっています。こうした状況を打開しようと企業に博士学生を売り込み、就職を後押しする大学もあります。

(2022年1月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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