住宅は、家計の非金融資産の大きな部分を占めています。しかし、日本は中古住宅の価値が低く評価されています。中古市場が小さく、住宅寿命は40年弱と米国や英国より大幅に短いことが影響しています。欧米に比べれば、新規宅地の造成などは容易で、住宅ローン金利は、金融緩和の影響で国際的にも低くなっています。さらに、住宅ローン減税などの支援策も拡充された日本は、新築コストは安くなっています。
しかし、日本は数十年で住宅を使い潰す形になっており、1年当たりの居住コストで考えると、諸外国より割高という見方もできます。投資したお金に対して資産価値が低い住宅は、ローン完済後の生活にも問題を及ぼすことになります。住宅を活用した老後資金などの捻出が難しくなります。
持ち家を担保に資金を借り、元本は死後に自宅売却などで返済するリバースモーゲージは、国際的には高齢者の資金調達の有力手段として評価されています。しかし、住宅の価値が低く放置されると、十分な融資が得られなかったり、サービスの利用自体ができなかったりするケースが増えています。こうした物件は売却も難しく、医療や介護を受けやすい場所への住み替えも困難になる懸念が出てきます。
(2022年11月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)