政府は、待機児童の解消に向け保育所の整備を急ピッチで進めました。0~2歳児保育や延長保育を拡充し、2015年には保育時間を1日8時間から11時間に延長しました。受け皿の拡充は、女性の就業率向上に貢献する一方、保育士不足に拍車をかけています。
こども家庭庁の調査によれば、保育施設の80.3%が保育士らの不足を感じています。求職者1人に対し求人が何件あるかを示す保育士の有効求人倍率は、2025年1月に3.78倍と、全職種平均の1.34倍を大きく上回っています。
背景には低賃金の問題があります。2024年の賃金構造基本統計調査から算出した保育士の平均年収は406万8千円と、全産業平均の526万9千円を大きく下回っています。政府は2024年度に人件費を前年度比10.7%引き上げていますが、基準の人数分しか上乗せされていません。保育士不足は、保育事故や不適切保育の増加という新たな歪みを生んでいます。
これまでの保育政策は親が働くことに重点を置くあまり、子どもの権利の視点が不十分でした。配置基準や賃金の改善は、全国に約110万人いる洗剤保育士に復職を促すことにもつながります。子どもの安心や成長にとって何が最善かを考えて財源確保を求めていくべきです。

(2025年9月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)