保育園が適切に運営されているか、年に1回以上、自治体職員が現場を確認する実地検査が義務づけられています。新型コロナウイルスが拡大した2020年度以降、実施できなかった認可保育園の数が急増しています。朝日新聞のアンケートによれば、実地検査を行えなかった園の数は2019年度が765でしたが、2020年度は3,267と4倍強に増え、2021年度も3,504でした。
実地検査を受け、問題が見つかった園に示される文書指摘の数は、同時期に2千~3千件台で推移しています。2019年度が3,578件、2021年度が2,599件でした。保育の質確保の重要性についての認識が年々高まっていることが、指摘の増加につながっています。
特に多かったのが、保育士の配置不足です。1人の保育士が何人の子どもを見るかの配置基準を満たさないケースが、3年間で852件にのぼっています。配置基準をめぐっては、保育士1人が4,5歳児の園児30人を見るなどと、子どもの安全を十分守れないような保育士数の少なさが問題視されています。子どもの死亡や30日以上の治療が必要な重大事故について、国は発生当日か翌日に報告をすることを義務付けていますが、その報告がなかったり、事故につながるような事案があったりした指摘は、3年間で計207件にのぼっています。
待機児童対策で保育園は急増しました。全国の認可施設の数は2015年に2万8,783でしたが、2022年では3万9,244に定員数も約50万人増えています。急ピッチで整備が進められた一方で、質の確保の難しさが指摘されています。年に1回、権限を持つ自治体が現場を目で見て、園の職員と対面して異常がないか確認するのは最低限必要なことです。
(2022年11月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)