待機児童の解消に向けて自治体が保育所の開設を急いでいます。乳幼児の受け入れ枠が広がる一方、質の低下に伴うトラブルが目に付くようになってきています。質が低下する主たる原因の一つが人手不足です。保育士の採用難は深刻さを増しています。8月の都の保育士の有効求人倍率は5.14倍にも上ります。
保育士不足の理由の一つが低賃金です。平均月給は20万9800円で、全産業平均を約9万円も下回っています。開設ラッシュで表面化したもう一つの課題が保育環境の格差です。古くからある認可保育所は広い園庭やプ-ルを備えるところが多いのですが、最近はビル内に開設する施設が大半です。人材も土地も限られる首都圏で、子どもを安心して預けられる環境を実現することが、少子化対策の第一歩です。
(2015年10月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)