厚生労働省は、保育施設の利用児童数が2025年にピークを迎えて頭打ちになる、との試算をまとめています。少子化の加速が要因で、認可保育施設に入れない待機児童の解消に向け、受け皿整備に注力する政策は転換期を迎えることになります。地域の実情に応じて、施設の規模や活用法を柔軟に見直す視点が必要となります。
保育施設の利用児童数は、2020年時点で273万人です。2015年よりも36万人増加しています。保育の利用希望者の増加で、待機児童は依然として深刻な状況が続いています。一時期より減ったものの、2020年4月時点で約1万2,000人にのぼっています。待機児童の解消に、国は2020年12月に公表した最新の新子育て安心プランで、2021年度からの4年間でさらに約14万人分を追加整備する方針を掲げています。
保育施設の利用児童数は、2025年までは20万人程度増加して300万人に迫りますが、それ以降は、減少傾向に転じると考えられます。女性の就業率の向上による保育需要の増加よりも、少子化のスピードが上回るからです。新型コロナウイルスの感染拡大は、こうした想定を上回るペースで少子化を加速させつつあります。2020年の出生数は約84万人と過去最少を記録しました。2021年はさらなる減少が予想されており、80万人を切ると推計されています。
少子化の加速は、整備してきた保育施設が余る時期を早める可能性が出てきています。人口減少が進む自治体の保育施設では既に影響が出ています。約900自治体の16.5%が、人口減少の影響で定員割れを起こし、保育施設の運営の継続が困難な事態が生じているとされています。今後は、保育施設の増加よりも、子どもを産み育てやすい社会の実現のためにも保育の質の改善に努めるべきです。保育の受け皿を維持していくための転換期を迎えています。
(2021年7月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)