個人マネーの増加

日本銀行の資金循環統計によれば、個人の預貯金や株式などの金融資産が急増し、2千兆円に迫っています。アベノミクスによる大規模な金融緩和による株高や、コロナ禍を受けた政府の給付金などで、個人マネーが膨らみ続けています。
家計の金融資産は、9月末時点で前年同期比5.7%増の1,999兆8千億円でした。2020年9月末以降、5四半期続けて過去最高を更新しています。内訳をみると、現金・預金が過半数を占め3.7%増の1,072兆円、株式などが28.6%増の218兆円、投資信託は24.0%増の90兆円で過去最高でした。

コロナ対策として、政府は1人10万円の給付金を配っていますが、外出自粛などで消費が抑えられていたこともあり多くのお金が現預金に回っています。株価もコロナ禍で一度は急落しましたが、昨年秋以降に急回復し、個人が保有する株や投信などの価値が上っています。
約2千兆円もの金融資産は、全体の約63%を60代以上が持っています。2030年には約65%まで高まる見込みです。資産が高齢層に偏り、子育てなどにお金が必要な世代に資産がなかなか移らないことが課題で、高齢者から高齢者へ老老相続が進んでいます。

金融資産がゼロの人やほぼない人が増えています。就職氷河期世代の40代に目立ち、非正規で低収入といった雇用環境が蓄えにも影響しています。総務省の調査によれば、金融資産ゼロ世帯は40代が19%と最も多くみられます。資産をたくさん持つ上位5%の富裕層が、家計全体の金融資産の31%を持っています。70%ほどの米国など、欧米よりは低いのですが、国内でも富の集中が進んでいます。

(2021年12月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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