健保組合の収支は、大企業の組合でも赤字が相次いでいます。全国に約1,400ある健康保険組合の半数超で、2021年度は保険料収入から医療費などの給付を差し引いた収支が赤字でした。前年度の33%から急増しています。医療費の増加に加え、65歳以上の高齢者医療への拠出金が膨らんでいます。赤字が続けば保険料率を上げざるを得ず、給付と負担の見直しが急務です。
2021年度は、保険料収支が前年度比1%増の約8.2兆円だったのに対し、拠出金は約3.6兆円と3%増えています。拠出金は、後期高齢者医療制度ができた2008年度に比べると、1兆円以上増えています。健康保険組合連合会は、2025年度には約4兆円になると試算されています。
健保組合は独立採算であり、赤字が続けば保険料を引き上げざるを得ません。2021年度は3割弱の組合が料率を上げています。労使折半する保険料率は、2021年度の平均で収入の9.23%と、過去最高の水準にあります。
健保組合は、1990年代初頭には1,800を超えていましたが、解散や合併が続いて直近では1,400を割っています。加入者数は近年はほぼ横ばいです。自前の健保組合を持っていない中小企業の従業員や家族は、全国健康保険協会である協会けんぽに加入します。健保組合が赤字で耐えきれず、財政難などで解散した場合は、加入者は協会けんぽに移ることになります。協会には1兆円規模の国費が投入されており、加入者が増えると国費負担も増すことになります。将来世代に負担のつけ回しが起きています。
(2022年10月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)