国民全体の医療費は年40兆円を超え、高齢化の進展でこの10年で15%ほど増えています。団塊の世代が後期高齢者になっていくことで、費用の増加は今後も見込まれています。後期高齢者医療制度は、窓口負担を除いた年17兆円の医療費を、後期高齢者が保険料として1割負担するほかは、現役世代からの支援金で4割、残りを公費で賄っています。
政府は、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の見直しを盛り込んだ健康保険法などの改正案を閣議決定しました。年収153万円を超える約4割の75歳以上の保険料を上げ、膨らむ医療費を現役世代と公平にまかなう仕組みを導入します。これにより、現役世代の負担は年800億円ほど抑制される見通しです。健康保険組合の加入者1人あたりでおよそ年1,000円分の保険料の軽減効果があります。
後期高齢者医療制度から出産育児一時金の財源として一部を拠出する仕組みもつくります。現在は現役世代の保険料を主にあてていますが、今後は費用の7%を出すことになります。現役世代の負担は年130億円ほど軽減されます。
(2023年2月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)