東京科学大学の研究チームは、全国300地点で約7千人の健康状態を調べ、その後の死亡や日常生活動作(ADL)などの状況を20年間追跡したNIPPON DATA90のデータを活用して、65歳健康寿命を調べています。65歳の人がその後の人生で日常生活を制限なく過ごせる期間を意味する65歳健康寿命は、喫煙や高血圧などの危険因子の有無で、男女ともに最大で約10年の差が生じるとしています。
血圧・肥満・喫煙・糖尿病などのいずれの危険因子もない人の65歳健康寿命は、男性22.6歳、女性26.3歳です。それぞれ87歳、91歳まで健康でいられる計算になります。逆に、収縮期血圧が160以上などの高血圧で、体格指数BMIが30以上の肥満、喫煙していて、糖尿病でもあるという人の65歳健康寿命は、男性12.9歳、女性16.2歳でした。危険因子がない人に比べ、それぞれ9.7年、10.1年短くなります。
取り上げた危険因子は、どれも脳卒中や心筋梗塞などを発症する可能性を高めます。脳卒中を起こして後遺症で自力での歩行が難しくなるなどして、健康寿命に差が生じることが考えられます。危険因子の種類によって健康寿命への影響は異なり、最大のリスクとなるのは喫煙でした。
日常生活を制限なく過ごせる期間に10年の差が生じれば、人生の質そのものが大きく違ってきます。高血圧や糖尿病などを防ぐため、定期的な健康診断が大切となります。これらの病気に罹っても、早めに見つけて治療を受けることで、脳卒中などの可能性は低くできます。

(吉村 やすのり)