傾聴の基本

傾聴とは、聞くことではなく、聴くことです。漫然と話を聞くのではなく、注意して相手の話に耳を傾けることです。傾聴は相手が抱える問題を解決するための入り口であり、解決策に結びつくまでの道のりとも言えます。その根底にあるのは、問題を解決するのは本人という考え方です。話している相手の気づきを促し、自らが解決策を引き出すことをサポートすることが傾聴です。
まずは相手を話しやすくさせることが大切です。相手が感じていることをそのまま共感して聴くということが基本となります。相づちや繰り返しなどのスキルを身につけることで聞き上手になります。相づちには2種類あり、そうですよねは同感で、賛成という自分の気持ちを示します。そうなんですねは共感で、賛成でも反対でもありません。共感でなければ、本音を引き出すのは難しいと思われます。
職場のミーティングや人材採用でも、傾聴は広がっています。この背景には世代間のコミュニケーションギャップがあります。コミュニケーションツールがデジタル化した若手は、対面の意思疎通に不慣れです。一方、ベテランは指示ばかりで、部下の話を聴くことがおろそかになりがちです。部下とのコミュニケーションがうまくいかないのは、聴くことをしないで教えるという名の押しつけがあります。デジタル化が進む時代でも、きちんと人の話に耳を傾ける傾聴力が問われる場面は多くなってきています。
傾聴は問題解決のための手段です。ビジネスにおいても、特にクレームなど顧客の気持ちの問題に対応しなければならない場面では、傾聴の姿勢で臨まなければ問題は解決しないはずです。コミュニケーション能力を高めるスキルを身に着けることは、相手を深く理解することにつながります。

(2020年3月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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