月経困難症
月経に随伴して起こる症状を月経困難症と言い、下腹痛、腰痛以外にも腹部膨満感、嘔気、頭痛などの症状が知られています。月経困難症は、機能性月経困難症と器質性月経困難症に分類されています。機能性月経困難症は、初経後早期からみられ、月経の2日以内に強く、痛みの性質としては痙攣性、周期性で、原因は子宮頸管の狭小や子宮の過収縮と言われています。
器質性月経困難症は、月経前から月経後まで続く持続性の鈍痛で、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫といった何らかの病気に伴うものを指します。
子宮内膜症は、通常子宮の内側にあり、月経の時に剥がれる子宮内膜組織が本来の場所以外にできてしまう病気です。卵巣やダグラス窩、腹膜などに発生しますが、まれに肺や腸、膀胱などにもできることがあります。月経周期に従ってそういった内膜組織が増殖を繰り返し、炎症や癒着を引き起こします。不妊症の原因としても重要です。卵巣にできるとチョコレート嚢胞という、中に古い血液がたまった嚢胞になり、将来的には卵巣がんの原因になる可能性も指摘されています。
子宮は平滑筋という筋肉で形成されていますが、その子宮の筋層内に子宮内膜様の組織が浸潤し、子宮内膜症と同じように月経の度に増殖を繰り返す疾患が子宮腺筋症です。子宮全体がびまん性に腫大し、強い月経痛や過多月経、月経期間の延長などが起きます。子宮筋腫は、子宮筋層を構成する平滑筋に発生する良性の腫瘍です。痛みを伴うことがありますが、部位によっては不妊症の原因になります。
(よぼう医学 2022.Spring №16)
(吉村 やすのり)