先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症とは-Ⅰ

発生頻度と症状

 赤ちゃんが生まれる前に、妊娠中のお母さんが感染することで赤ちゃんに影響が出る感染症を母子感染症と呼びます。その中でもサイトメガロウイルス(CMV)は、わが国で最も頻度が高く、出生児の約300人に1人の割合で発生しています。CMVは多くの人が乳幼児期に感染するウイルスでほとんどの人は症状が出ません。その後、終生体の中に潜伏します。妊娠中にこのCMVに感染したり、再活性化が起こると、生まれてくる赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。最近では、妊娠以前に感染して免疫を持っていたお母さんでも、赤ちゃんがCMVに感染する事例があることが明らかになっています。

 赤ちゃんが胎内でCMVに感染すると、出生時に既に何らかの症状が現れる症候性と症状がまったく見られない無症候性に分けられます。症候性感染症の赤ちゃんは、将来、難聴やてんかん、発達の遅れなど、重い後遺症が残ることが多くなります。その一方、無症候性の赤ちゃんは出生時には問題なくても、5~10%であとから難聴や言語発達遅延、自閉症スペクトラム症などが出ることがあります。この先天性CMV感染による難聴は、赤ちゃんの難聴の原因の第2位であり、遺伝性難聴に次いで多い原因です。

(月刊母子保健 第793号 令和7年5月1日)
(吉村 やすのり)

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