先進国におけるワクチン余剰

先進国で新型コロナウイルスのワクチンが余剰となり、一部に使用期限が迫っています。欧米では、必要量以上に契約・購入したワクチンの在庫が増えており、年末までに2億回分超が使用期限の接近で使い道がなくなるおそれが出てきています。日本でも来春までに1億回分が期限切れに直面します。接種の遅れる途上国にワクチンを早期に行き渡らせるため、国際的な融通を急ぐ必要がでてきています。
日本は、現在約5億6,000万回分のワクチンを契約・購入しています。欧米に比べて接種開始が遅れたものの、直近で6割以上が2回接種を終えています。11月頃までに希望者への接種がほぼ一巡し、その後は在庫が膨らむ見通しです。2回接種から8カ月後の高齢者への追加接種を考慮すれば、年末頃に期限が2カ月を切るワクチンが出始めます。2022年3月時点では、1億回分超が期限2カ月未満となってしまいます。
接種の進む国は、有効期間の長いまとまった量のワクチンを計画的に寄付する必要があります。途上国の準備が整わない中で寄付しても、期限内に接種を終えるのは難しいと考えられます。先進国には、インフラ面を含めた包括的な支援が求められます。

(2021年10月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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