先進国における移民の減少

世界で反移民の機運が高まったところに、新型コロナウイルス禍が重なりました。グローバル化で進んだ活発な人の移動が転機を迎えています。先進国の人口は想定以上に早く減りかねず、移民がゼロなら来年から下り坂に入ると試算されています。
人口に占める移民の比率と1人あたりの国内総生産(GDP)を比べると、移民が多いと1人あたりのGDPも高い傾向があります。移民が10~20%の米英独仏や20%を超えるカナダなどは、5%以下の日本や韓国より1人あたりのGDPが高くなっています。国際通貨基金(IMF)も、多様なスキルをもつ移民が生産性向上に貢献するとしています。総雇用者に占める移民比率が1ポイント高まると、5年目までにGDPをほぼ1ポイント押し上げると分析しています。

先進国の人口は、2000年以降7%増えており、増加分の4割強に当たる3,500万人が新興国から流入しています。移民が経済成長を支えています。国連の2019年の試算では、移民がゼロだったら、標準シナリオなら先進国の人口のピークは2036年におとずれます。移民がゼロなら、今年をピークに坂道を転げ落ちるように減ることになります。2030年時点の人口は、標準シナリオに比べ2,400万人下振れし、現在、13億人弱の人口は2050年には12億人弱になります。ほとんどの国の出生率は、2100年までに人口維持に必要な水準2.1を下回ります。新興国とも労働力を奪い合うことになり、移民政策が国力を左右する時代になることが予想されます。

 

(2020年10月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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