合計特殊出生率の低下は、わが国のみならず欧米やアジアの先進国や地域でも共通の課題となっています。優等生とされてきたフランスも近年は低下傾向にあり、韓国は1を割っています。日本は幼児教育の無償化や待機児童の解消といった対策を打ち出してきたものの、仕事と育児の両立が進まず、結婚や出産を遠ざけてしまっています。
少子化対策の成功例とされるフランスでも、2008年の2.01から2018年に1.88に低下しています。20歳代の出産が減っていることから、女性がキャリアを重視して出産を遅らせています。一方、上昇しているのがドイツとスイスです。ドイツは父親が積極的に育児に参加しています。2018年は1.57と0.19ポイント上昇しています。
日本の出生率は2005年に1.26と過去最低となりました。その後回復し、近年は1.4台で推移していました。今回は8年ぶりに1.3台に落ち込んでいます。育児との両立が可能な働き方の定着が課題です。男女ともに出産や子育て期に業務を絞り、フルタイムに戻るといった働き方がしにくいと、育児休業の取得は進みません。新型コロナウイルスの影響で妊娠出産を遅らせる夫婦も出ると思われます。今後の出生数や率がさらに低くなることも予想されます。
(2020年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)