光免疫療法の有用性

がんだけを狙い撃ちする光免疫療法の新薬が、世界で初めて日本で承認され、20施設で治療が受けられることになりました。従来の治療で治らない頭や首の部分のがん患者だけが今は対象ですが、新たな治療法への期待が高まっています。
今年1月に発売された新薬アキャルックスは、近赤外光をあてると反応する化学物質IR700を抗体(たんぱく質)に結合させたものです。この抗体には、がん細胞の表面にある特定の分子であるEGFRに結びつく性質があります。薬が体内に入り、約24時間後に近赤外光をあてると、がん細胞に結合した薬と光が反応し、がん細胞を壊します。
手術室で腫瘍に針を刺して内部から光をあてる手術法と、腫瘍の表面に光をあてる方法があります。腫瘍の再発部位や深さにより異なりますが、照射時間は4~6分です。腫瘍の大きさによりますが、手術そのものは数十分ですみます。術後は、投薬の影響による光過敏症を避けるため、入院中は薄暗い部屋で過ごします。1カ月間は直射日光を避けることが求められます。
この治療は、所定の講習を受けた医師がいるといった条件を満たす20施設でのみ受けられます。費用は薬代だけで1回約400万円ですが、4回まで公的医療保険が適用され、高額療養費制度が使えます。69歳以下の自己負担上限は、年収により月3.5万円~30万円程度です。

  

(2021年5月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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