児童相談所(児相)とは、本来、親からの相談を受ける機関で①養護相談、②障害相談、③非行相談、④躾や不登校などの育成相談、⑤保健相談など、仕事は多岐にわたっています。児童福祉法に基づいて、都道府県と政令指定都市に設置が義務づけられ、中核都市に置くこともできます。現在、全国に212カ所あります。最近は、虐待相談が急増し、対応に追われています。児相は親の同意なしで子どもを一時保護できる権限を持ち、家庭裁判所が認めれば、保護者の意に反して施設に入れることもできます。親権の喪失や停止の申し立てもできます。
児相の業務を担う児童福祉司は、2018年4月現在全国で3,252人いますが、2017年度の虐待相談の対応件数は、約13万件にも達しています。虐待通告があれば、48時間以内に子どもの安全を確認しなくてはならず、夜中の呼び出しや週末出勤も珍しくはありません。国は2022年度までに2千人増やす方針を示していますが、なお不十分です。質も問われています。虐待対応は、親との対立もいとわずに一時保護などの介入をする一方で、親への支援も行わなくてはなりません。それだけに専門性や豊富な経験が必要となります。
児相の数が少なく、管轄する人口が多すぎ、きめ細かな対応ができていません。日本では、1児相が管轄する人口が約60万人ですが、ドイツは約16万人、イギリスは約37万人です。地域差はありますが、一時保護所や児童養護施設に余裕がなく、里親も少ないため、児相が保護した後、子どもの行き先に困るケースは少なくありません。子どもの命と安全は、児相だけで守ることはできません。児相を支える社会の仕組みや地域との連携は欠かせません。
(2019年3月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)