公務員からスタートアップへ

公務員の退職者は増加傾向にあります。公務員は国家と地方合わせて約340万人もいます。そのうちキャリアと呼ばれる国家公務員総合職の入省5年未満の退職率は10%で、3年前に比べて5ポイントも上昇しています。



近年では、コンサルティング会社やIT(情報技術)など、若くても実力次第で稼げる企業の人気が高まり、転職者も増えています。人事院の調査によれば、将来に転職を考えている新卒国家公務員の割合は計36%と、4年前より9ポイント高まっています。

公務員からスタートアップ企業に転じる人が増えています。2022年度の転職数は2年前の4倍となり、転職先の3割を占めるまでになっています。終身雇用を捨て、医療や脱炭素など社会の課題解決の場として新たな公僕を目指す人が多くなっています。主要国はスタートアップの育成を競っており、官と新興企業をつなぐ人材移動の輪ができれば、日本の成長力の底上げにもなります。

 

残業の多さに加え、民間企業より賃金水準が低いことなどが退職の理由です。また、公務員が新興を選ぶ背景には、社会課題の解決に取り組む企業が増えていることがあります。待遇の改善も追い風です。スタートアップに転職して年収が増えた人は43%もおり、下がった人の36%を上回っています。横ばいも21%おり、6割強の人の年収は減っていません。しかし、新卒者のスタートアップの人気は低いままです。
スタートアップへの人材供給が進む一方、公務員離れには危うさもあります。国家の全体構想を練る中央省庁や地域社会を支える自治体から優秀な人材の流出が続けば、国力の低下や地方の空洞化につながります。日本では新興から公務員への転職は多くありません。米国は官民を行き来する双方向の人材移動が活発で、スタートアップ出身者の政府機関での活躍も目立っています。新興で経験を積んだ人材が、回転ドアのように官民を行き来しやすくする転職制度の整備も大切となります。

(2023年7月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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