公立幼稚園の閉鎖が全国で増えています。2019年10月から、幼児教育・保育の無償化が実施され、私立に比べて費用が安いという長所が薄れたことが要因となっています。施設の数は、2021年までの5年間に、全国で500以上減少しています。私立幼稚園は共働き世帯のニーズを踏まえ、保育所機能も備えた認定子ども園への移行が進んでいます。長時間の預かり保育など手厚いサービスを展開する私立幼稚園や認定こども園などに園児が流れています。
幼稚園は、1947年施行の学校教育法で、満3歳から就学までの教育機関に位置付けられています。自治体運営の公立は、1970年代の第2次ベビーブームの受け皿として急増しました。ピークの1985年には、全国で6千施設を超えていました。近年は閉鎖が加速しています。2021年の公立幼稚園は、保育所機能もある幼保連携型認定こども園を含めて3,965施設です。2017~2021年の減少数は、年平均134施設で、その前の5年の1.5倍超のペースになっています。
少子化は進んでいますが、共働き世帯の増加で教育・保育施設に通う子どもの数はそれほど減っていません。2021年に幼稚園・保育所・認定こども園に在籍する子どもは380万人で、2016年と比べ2%減です。公立とは対照的に、幼稚園型・幼保連携型の認定こども園を含めた私立施設数は、2021年時点で1万1,673に上り、2017年から17%増えています。
子育て世帯に幅広い支援策を備える基礎自治体では、出生率が高くなっています。公立幼稚園を閉鎖する場合には、地域のニーズを踏まえた新たな支援策が必要になります。自治体は、地域のニーズを丁寧に把握した上で財源を有効に活用し、子育て支援策を充実させる必要があります。
(2022年12月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)