共同住宅の意義

海外では社会福祉政策の一環として、子どもを含む多世代型の共同住宅の整備が進んでいます。わが国でも親子でシェアハウスなどの共同住宅に住み、家事や育児をシェアする取り組みが広がっています。核家族で不足する人手を補い合うことで、共働きが続けやすくなる利点があります。プライベートな空間を確保したり、夕食のサービスを付けたりするなど、物件やケアの内容も多様化しています。
コレクティブハウス聖蹟では、一般のマンションのように各世帯にトイレや台所がある一方、食事をしたりする共有スペースがあります。育児を周囲に全面的に頼るわけではなく、基本的には自分の家族で完結させますが、出来ない時は周りに頼ることができます。子ども同士が部屋を行き来して遊び、手の空いている大人が、他の家庭の子どもの保育園送迎をすることもあります。
国や自治体も、子育て世帯が交流しながら育児ができる共同住宅づくりを後押ししています。国土交通省は、低所得者らの住宅を保障する住宅セフティーネット制度を改定し、シェアハウスにひとり親世帯も入居できるようになりました。シェアハウスに慣れた世代が親となり、そこで子育てもしたいと考える人がようやく増えてきました。入居者同士が起業したり、結婚したりする例も数多く見てきています。空き家の解消や子育て、高齢者の福祉の観点から、政策としてケアと住居の組み合わせに積極的取り組むべき時期が来ています。

(2022年2月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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