第16回夏季パラリンピックが開幕しました。新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、世界各国から障害のあるアスリートが集まりました。こうした機会を通して、誰もが参加できるバリアフリーの社会、真の共生社会への実現に向かうことが期待されます。
共生社会とは、障害の有無や人種、性別、性的指向など様々な面の違いを肯定する社会を指し、健常者と障害者の共生は、21世紀の世界的な潮流となっています。国連は、2006年に障害者の権利に関する条約を採択し、日本は2014年に批准しました。2016年には障害者差別解消法が施行され、市民の暮らしの場でのバリアフリー化が進められています。
国土交通省によれば、1日平均3千人以上が利用する鉄道駅などで、障害者対応トイレを設置済みなのは、2019年度は88%で、2011年度から10ポイント増加しています。車いすのまま乗れるノンステップバスの普及率も、2019年度に6割を超えました。教育現場には障害の有無で学ぶ場を分けないインクルーシブ教育の方針が出され、特別支援学校だけでなく一般の学校に選択肢が広がっています。
内閣府の障害者白書によれば、国民の約7%が何らかの障害を有しています。国際パラリンピック委員会(IPC)などは、世界人口の15%と推計される障害者の社会参加を促すための人権運動を展開しています。各国のランドマークを紫色にライトアップするほか、SNSなどを通じて啓発する活動を始めています。
(2021年8月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)