再生医療に使う細胞を効率的に作るため、人工知能(AI)を活用する研究開発が進んでいます。再生医療では、iPS細胞などを培養皿に分けて増やし、体の様々な細胞に育ててから患者に移植します。細胞を増殖させる際、途中で質の悪い細胞が混じったり、不要な種類に変化してしまったりします。こうした細胞は、研究者らが顕微鏡で見て、微妙な形状の違いなどから判別して取り除きます。しかし、作業の習熟には経験を積む必要があり、できる人も限られてきます。
島津製作所は大阪大学と協力し、培養中に変質したiPS細胞を見極める技術を開発しています。膨大なデータの中から特徴を見つけ出す深層学習(ディープラーニング)を使い、不良な細胞を98%の精度で判別できたとしています。筑波大学では、画像からAIが質の悪いiPS細胞を見分け、レーザーで除去する方法を開発しています。自動化で大量増殖が可能になれば、再生医療の応用研究に弾みがつきます。
(2018年3月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)