近年、再生医療のさまざまな臨床研究が始まり、本格的な普及段階に入いろうとしています。これまで治療が思うようにできなかった難病の患者で、効果が出始めています。さらに規制が緩和されて、iPS細胞などを使った臨床研究の計画も相次ぎ動き出しています。安全性やコストなどの課題もありますが、細胞培養や試薬などの開発で、民間企業の参入も加速しています。
これまでの再生医療の臨床研究においては、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を用いた治療より、体にある組織幹細胞を使用した臨床研究で有用性が発揮されています。iPS細胞では昨秋に始まった理化学研究所の臨床応用でも、治療を受けた加齢黄斑変性の患者はがん化の兆候もありませんが、有用性はまだ示されていません。再生医療は患者自らの細胞などを使って治療するものであり、外科手術や薬を使った化学療法に比べて効果が高い治療と期待されています。しかし、課題もあります。不可欠な動物実験の指針や、細胞が腫瘍化しないかなど安全性評価の詳細な基準の作成はこれからです。
(2015年3月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)