再生産数は感染流行の指標となるか

再生産数とは、あるウイルスを1人の感染者が何人に感染させるかを示す値です。1人が2人に感染させる場合、再生産数は2となります。このペースで感染が拡大し、さらに10回続くと感染者は2,000人以上に膨らむことになります。対策によって再生産数が1を切れば、流行が収まりつつあることを示しています。1以上が続けば、流行が勢いを増すことになります。新型コロナウイルスの感染対策で、各国政府が国民らに自宅待機を求めているロックダウンの解除や緩和を探る上で重要な指標となっています。
新型コロナをめぐっては、香港中文大、米フロリダ大など多くの世界の研究機関が、2月時点でいずれも再生産数が3程度と、世界保健機関(WHO)が当初推定していた1.4~2.5よりも高い数値になりそうだと推定しています。2009年に流行した新型インフルエンザが1.4~1.6、季節性インフルエンザが1.3、重症急性呼吸器症候群(SARS)が2~4と比べても比較的高い数値となっています。
欧州全域と米国の一部では、現在1未満に低下しており、感染抑制の対策は一定の効果が出ているとみられています。感染が収束に向かう1未満になったことより、ドイツや米国では経済活動の一部再開に踏み切っています。しかし、数値が1をわずかに下回るか上回るかで、流行の動向は大きく左右されます。経済への影響を懸念するあまり規制緩和を急げば、反動で再び感染が広がりかねません。

(2020年4月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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