うつ病患者の中には、日照時間が短い冬などに、気分が落ち込んだり日中に強い眠気が出たりする人が多くなります。この冬季うつ病は、季節性感情障害と呼ばれます。強い人工光を浴びる治療を行うと症状の改善が期待できます。患者は、冬の日照時間が短い地域に比較的多くみられます。その他、日照時間が少なくなる梅雨時や、外出する機会が少ない生活を送ると、発症する場合があります。
日光を浴びる機会が少ないとセロトニンという神経伝達物質が減ります。この物質には、気分を落ち着かせる働きがあります。冬季うつ病の患者は、光を浴びる量に敏感で、症状が表れやすくなります。成人のうち、冬季うつ病が疑われる人は約2%だと報告されています。
主な治療法として行われているのが、患者に強い人工光を浴びてもらう光療法です。一般的な居室の照明の20~50倍明るい光を出すスタンド式の装置を使い、朝起きてから30分ほど光を浴びます。1分間に5~10秒ずつ、光源を見つめます。網膜の光を感じ取る細胞が刺激され、脳に伝わると、セロトニンの生成も増えると考えられています。
セロトニンを増やすには、生成に関わるトリプトファンと呼ばれるアミノ酸の摂取も必要となります。この物質は、食物でしか取ることができません。タラコなどの魚卵やチーズ、ヨーグルト、バナナ、ナッツ類といった食材に豊富に含まれています。魚や肉、乳製品などは、バランス良く食べることが大切です。
(2020年2月2日 読売新聞)
(吉村 やすのり)