厚生労働省は、毎年末に発表する当年の出生数推計をとりやめました。コロナ禍の影響で推計が困難になっているためです。2019年に令和婚で結婚が増えたにもかかわらず、1~10月の出生数は、前年同期比2.3%減り、年間でも2019年の86万人から減る見通しです。
出生数へのコロナ禍そのものの影響が本格化するのは2021年からです。2020年1~10月の婚姻件数は13.3%もの落ち込みを示しています。2021年の出生数は78万人を切ることは確実です。出生数の減少は日本だけでなく、世界的な現象でもあります。出生数が80万人を割り込むのは33年のはずでしたが、12年も前倒しになる可能性が高くなっています。2021年は、出生数の大幅減というもう一つのコロナショックに見舞われる公算が強くなっています。
出生数80万人は、人口ピラミッドのピーク世代の3分の1以下の水準に過ぎません。団塊世代(1947~49年生まれ)は各年270万人近くが生まれ、今も3年間で計600万人を超えています。現在40代後半の団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)も各年約200万人もいます。来年生まれる子どもたちは2050年に働き盛りを迎えます。将来推計人口によれば、その時に65歳以上が総人口に占める比率(老年人口比率)は4割近くに達します。コロナ禍で高齢者比率の上昇が加速はしても、その逆はないでしょう。
(2020年12月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)