わが国の少子化は、想定を超える速さで進んでいます。結婚しない人の増加や晩婚化に新型コロナウイルスの感染拡大のため妊娠を控える傾向が重なり、2021年の年間出生数は80万人を割り込むと試算されています。厚生労働省の発表によれば、今年1~10月の妊娠届の件数は、前年同期比5.1%減です。5月に前年同月比17.6%減となるなど、4月に緊急事態宣言が出た後の落ち込みが大きくなっています。地域別に見ると、4月以降は10月まで東京都が9.1%減、北海道が8.1%減、大阪府が7.6%減といったように感染者数の多いところで減少が目立っています。
日本総合研究所が妊娠届などを基に試算したところ、2020年の出生数は84万8,000人となり、2021年は79万2,000人まで落ち込むと予想されています。100万人を割った2016年からの減少ペースは、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に示した最も新しい推計よりも12年も前倒しで、80万人を割ることになります。出生数は、戦後の第一次ベビーブーム時に比べ、わずか3分の1に過ぎません。
婚姻数の減少が一因です。厚生労働省の人口動態統計によれば、婚姻数は2020年1~10月の速報値で、42万4,000件と前年同期から13%以上も減っています。わが国の場合は、非婚化が中長期的にも出生数の減少をもたらす可能性があります。コロナ禍で在宅勤務などが浸透して外出が減れば、出会いの機会も減ってしまいます。不安定な雇用や収入減は、少子化に拍車をかけています。年金の支給額減少や医療費負担の増大などのしわ寄せが、若年世代に一段と向かえば、経済不安などから結婚や出産をさらにためらう悪循環に陥ってしまいます。
(2020年12月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)