出生率の向上を目指して

一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率が、2017年は、前年より0.01ポイント低い1.43となりました。ここ数年、1.4台で横ばいが続いています。生まれた子どもの数は、2年連続で100万人を割り、94万6060人で、前年より3万人以上少なく、過去最少を記録ひています。出生率は横ばいなのに出生数が大きく減ったのは、長年の少子化の影響があります。母親となる性成熟期の年代の女性人口そのものが減っているため、出生率の大幅な改善がみられない限り、子どもはますます少なくなってしまいます。
子どもを持つ、持たないは、もちろん各人の選択であり、政府が押しつけるものでは決してありません。一方、子どもが欲しいと考える夫婦らの希望がすべて叶った場合、その出生率は1.8に上昇すると政府は推計しています。それにもかかわらず、わが国の出生率が上昇しないのは、若い世代の現代社会に対する一種のレジスタンスかもしれません。若い世代が、子どもを持ちたいと思えるような環境をつくり出すためには、希望を阻む社会的な要因をなくし、若い世代の子育てへの不安を解消しなければなりません。
最も大切な政策は、子どもを育てながら働ける環境を整えることです。これは少子化対策であるとともに、生産人口年齢の減少に伴う目下の労働力不足を和らげる効果もあります。そのためには、保育サービスの拡充が必須です。安心して子どもを託せる場所が増えれば、もう1人子どもを持つハードルも低くなります。政府は2020年度末までに待機児童を解消するとしています。さらに、来年度からの幼児教育・保育の無償化は、若い世代への経済的支援にもつながり重要な政策であることから、消費増税も必要となっています。
車の両輪となるのが、企業の働き方改革です。硬直的な長時間労働をなくし、働く時間と場所に多様な選択を用意すべきです。望まない転勤制度を工夫したり、柔軟な働き方が広がれば、男性が育児・家事を分担しやすくもなります。若い世代の中には、十分な収入が得られず、結婚や子育てに踏み切れない人もいます。雇用においても非正規社員を減らし、経済的安定を図ることが必要です。そのためには、職業訓練などで能力を伸ばす機会を増やし、安定した職に移れるよう支援することも大切です。
出生数から死亡数を引いた自然減は約40万人で、過去最大となっています。今やわが国は、超少子高齢社会であると同時に死亡大国となっています。日本経済の活力を保ち、社会保障制度を維持するためにも、あらゆる手を打たねばなりません。

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