出産による女性賃金の減少

 大和総研らの調査によれば、第1子の出産後の女性の賃金は、出産1年前と比べて54.8%減少し、8年経っても回復していません。正規雇用者に限っても2割減っています。非正規転換や時短、配置転換によって出世コースから外れ、マミートラックに乗ってしまうことが問題となっています。

 出産や育児によって賃金や就業率が下がるチャイルドペナルティーは女性に偏っています。子どもを持てばキャリアを諦めざるを得ないと感じる女性が増え、出産を回避する傾向が強まれば少子化はより深刻になります。ここ数年で男性育休は広がりました。厚生労働省によれば、2023年度の取得率は過去最高の30.1%で、2年前の14.0%から倍以上に増えています。しかし、子育ては育休を取って終わりではありません。

 保育園に通い始めれば子どもが発熱して呼び出され、小学生になれば下校後の預け先に困る小1の壁も待ち受けています。育休復帰後も男性が子育てに参加できなければ、女性に負担が偏ることになります。男性が長時間働きがちな環境を改善しなければ少子化の食い止めは困難です。

 正規雇用の男性が働く時間を1日2時間減らせば、出生率は0.35上昇するとの試算があります。男性が残業せずに帰宅し、家事や育児をする時間を確保すれば、女性が仕事と子育てを両立しやすくなり、結婚や出産に前向きになると考えられます。

(2025年3月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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